泡沫の夜
社食の入り口が俄かに賑やかになって、そっちの方に視線を向けると理央くんと、同じ課の人達なんだろう数人のかたまりが見えて、慌てて視線を逸らした。
「私は断然あっちがタイプだな」
八原さんの視線が理央くん達の方に向かう。
「隣に立つには相当な自信がいるけどね。あの容姿だもん。女は気が抜けない。疲れない?」
「期間限定ならアリじゃない?」
冗談混じりとは言え笑えない会話だ。
まさに今自分は仮初めの姿で彼と期間限定の付き合いをしているのだから。
でも、やっぱり理央くんはカッコいい。
彼の周りにいる女性達も綺麗。彼の隣にいても違和感のない彼女達が羨ましく思う。
私じゃ分不相応だよ、ホント。
こんな昼中、あの姿でいたとしてもきっと彼女達には到底及ばない。
夜の限られた時間だけ、それが私に与えられた神様からの慰みだ。
ほんの少しの間だったけど、十分過ぎる位幸せを感じることができた。
もう、お終いにしても悔いはない……はず。