泡沫の夜
Friday night



もしかして、理央くんは気付いた?

昼間の社食での出来事を思い返す度、そんな不安に襲われた。

でなければ、あの時の行動は説明がつかない。

バレるはずがないとたかを括り、あんな不純な付き合いを続けてきたのは自分だ。

理央くんは、私の我儘に付き合わされただけ。

なにも言わなかったのは、軽蔑したからなんだろう。

今になって後悔するくらいなら、彼だと気付かなかったあの一度きりのことで終わらせればよかった。

私は馬鹿だ。

遠目で見つめているだけで満足して入ればよかった。

あの夜彼を引き止めなければよかった。

そうすれば、こんなに好きにならずに済んだのに……。

好きに……。

最初はほんの少しの興味だった。

地味な私が、会社でも有名な彼と愛し合うことができて、

彼も私との関係を続けたいと思ってくれたということは、

私でも彼を満足させることができるのだと、勘違いしてしまった。



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