泡沫の夜



「そんなに、俺の事が嫌なのか?」

私を見下ろす理央くんの縋り付くような、そんな表情に戸惑う。

どうして……?

私と離れたいんじゃないの?

敷島さんのことを引き合いにして、身軽になりたいんじゃないの?

私のことなんて……。

「何も……知らないくせに」

「……?……何を知らないって?」

「……」

「敷島さんなら、知ってるっていうのか?」

そんなこと言ってないのに。

敷島さんのことは今全然関係ないのに。

どうしてよ。どうして離してくれないの?

私のこと軽蔑してるくせに。

私のことなんて……

「……のことなんて、好きじゃないくせに!」

さっきから敷島さんのことばかり口にする理央くんにムカついていた。

他人なんて引き合いに出さずに、嘘をついていた私を責めて、嫌いだって言ってくれればいいのに。

悔しくて、悲しくて、情けなくて……勝手に涙まででてきた。



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