泡沫の夜
こんな、意識も思考も溶かされて、まともに考えることもできない状態にしてから聞かれても答えられるわけない。
というか、もしかしてそれを狙ってる?
自分以外感じないようにさせて、自分の名前を言わそうとしてる、とか?
「……ズルくない?」
私の思っていたことが伝わったのか、理央くんは「ちぇっ、バレたか」と拗ねた顔をした。
年下なのに普段の大人びた印象の彼には見ることがなかったその年相応の表情に、胸がキュンとした。
ギャップ萌えというやつか。
「……じゃあ、もう答えなくていい。迷ってるなら教えるまでだ。俺と、俺以外のどっちがいいのか」
言うなり、私を足で囲んだまま体を起こしてシャツを脱ぎ捨てる。
露出した肌を真っ直ぐ見ていられなくて目を背けた。
初めてじゃないのに、何度もこの胸に抱かれているのに……だからこそ余計に見ていられないのかも。
気恥ずかしさで泳がせた視線の端に、理央くんの手が私の胸元に伸びてきたのが見えた。
シャツのボタンが外されていく。
「待っ……」
「待たない」
思わず胸元を隠した手を簡単に掴み上げられて、頭の上で縫い止められる。