泡沫の夜
ふと思った。
どうして彼はこんな風に私の事を考えてくれているんだろうって。
彼とは金曜日の夜だけの関係だったけれど、身体だけを繋げていたわけじゃなかった。ほんの少しの時間だけだったけれど、理央くんは私の他愛のない話を真剣に聞いてくれたり、逆に楽しい話を聞かせてくれたりした。
一晩だけの、儚くて脆い関係だったけれど、いつだって私に向ける言葉に嘘はなかった。
彼の言葉はいつだって温かかった。
嘘ばかりの私に、彼はいつも優しくしてくれた。
「……どうして?」
「……?」
「……どうしてこんなに優しくしてくれるの?……私はずっとあなたを騙して、嘘ばっかりだった……それなのにどうして……」
こんなに大切に触れてくれるんだろう。
こんなに優しく愛してくれるんだろう。
喘ぐ様に問うた言葉に、彼は額に流れる汗を拭いながら小さく笑った。
「そんなの決まってる」
「……?」
「あんたが好きだからだよ……。あんたを喜ばせたいから。体だけじゃないよ、いつも、どんな時だって俺が……俺があんたを笑顔にしたいから……」
だから、どうして?
私は貴方にそんな風に思ってもらえる人間じゃない。
「嘘……ついてばかりだったのに……」