泡沫の夜
「羽奏は覚えてないんだろうけど、俺はずっと前から羽奏のことを知ってたよ」
耳元で話す理央くんの息が耳にかかってくすぐったかった。
話は聞こえていたけれど、まともな思考回路じゃなくて、夢現に理央くんの話を聞いていた。
まるで子守唄のように心地よくて。
「初めて羽奏に会ったのは面接会場の控え室だった……」
「……」
「……凛と立つ姿が綺麗でさ。……なかなか笑顔も見れないからなんとか笑顔が見たくて……他の誰かじゃなくて……俺が羽奏を……?羽奏?……なんだよ寝ちまったの?」
途切れ途切れに聞こえる声も、いつしか深い谷間に落ちていくようなそんな感覚の方が優って聞こえなくなっていった。
なんだかとても嬉しい言葉ばかり聞こえていた気がするのだけど。
でも、もうダメ……眠りたい。