泡沫の夜
「……ご心配には及びません。羽奏は、俺しか見えてませんから」
「!」
どこからそんな自信が湧いてくるのか、私だったらそんな風には言えない。
でも、悔しいけど事実だし。
恥ずかしくもあったけど、頷いて顔を伏せた。
「……なんだ、やっぱりつまんないな」
重ねて理央くんの言葉に頷いた事で、納得してくれたのだろうか?
敷島さんは「つまらない」と言いながらもその笑顔はとても穏やかだった。
そんな敷島さんと、キッパリ私とのことを宣言してくれた理央くんを交互に見て、ふと思った。
職場では秘密にしておきたいと、それが私達がこれからもずっと付き合っていく為に必要な事だと思っていたけれど……。
「理央くん、」
敷島さんが先に給湯室を出て行き、その後を理央くんが追っていくその背中を呼び止めた。
「どした?」
私の声に振り返った理央くんの眼差しがなんだかとても甘い。
会社だよ……と言いそうになったけど寸でのところでやめた。
これが私だけに向けられるものなら、ずっと見ていたいと思うから。