ヘタレとドSとツンデレと
二人でスポンジのキャンバスにクリームやフルーツをデコレーションしていく作業は、初めての共同作業の婚礼儀式の一つにもあるケーキカットよりも貴重なものの様に思えて、ナツキにとっては幸せな時間だ。
「んまっ!」
「うん、美味しそうに出来たね。あ……ノア」
頬に付いているクリームに気づいて、思わず彼女に手を伸ばす。
人差し指でそれを掬い取ると、彼女の頬の柔らかさが指先に伝わる。
女の子の頬ってこんなに柔らかいんだ、なんて思わず考えてしまうと、不思議そうにした瞳がナツキを覗き込んでいて、その距離があまりにも近かったので思わず声が上擦ってしまう。
「ごめん!いや、その……クリームが、付いてたから……だから」
慌ててしまって、何だか言い訳くさくなってしまった。ナツキの心拍数は上昇するものの、ノアの方はますますきょとんとするばかりである。
ナツキばかりが意識してしまうのは悔しいが、かといってこれ以上彼女に触れるのは不自然な気がする。
「もう少し……離さなきゃ良かった」
「う?」
「ううん、何でもないよ」
ナツキは自分の手を見つめて呟いた。
甘いケーキのプレゼント。
お菓子言葉
ショートケーキは初恋。