ヘタレとドSとツンデレと

「ねー、何買った?」

「私はパスケースと携帯カバー」

「見せて!可愛いじゃん。私も買えば良かった」



 前方から高校の制服を着た二人組が何やら楽しそうに会話をしている。



二人の会話からしてこの辺りで買い物を済ませて見せ合っているのだろう。


普段なら気にも止めないものの、完全に行き詰まっているシノミヤは、無意識のうちにその会話を覚えてしまっていた。




「まあ、あいつには必要ねえもんかもしれねえけど、取り敢えず行ってみるか」




 店名までご丁寧に会話に流してくれた女子高生の情報のみを頼りに、シノミヤは歩き出す。




店の前まで来たところで、激しく後悔していた。




そこは女子高生から幼児まで、店内のほとんどが女ばかり。


その上、シノミヤは売っているキャラクターに見覚えがあった。


雪だるまの様な丸いフォルムの二頭身サイズのピンク色の豚。


つぶらな瞳……と言えば聞こえは良いが、子供の落書きとしか思えない顔立ちのそれは、本日の主役が常日頃から愛してやまないキャラクターなのだ。



 ヘタレの新人同僚に何度も名前を教えて貰った事はあるが、悪趣味な名前だったぐらいで覚える気が起きない。
そんな間抜け面の豚のキャラクター限定ショップ。



「まじかよ……、そんな人気あったのか、あれ」


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