ヘタレとドSとツンデレと
人形を受け取って買い物を済ませると、選んでくれた子供に一つ小さな袋を差し出す。
驚いたように見つめてくる大きな瞳が、それを受け取って良いものか迷っているようだった。
「それやるよ。選んで貰ったからな」
「良いの?」
「その代わり、それは俺が選んだもんだから、あんま期待すんなよ」
中身は本当に小さな豚のついたキーホルダーだ。
高価な物でもないが、その子供は大事そうに手で包み込んで笑っていた。
「ううん、ありがとう。お兄ちゃんも、プレゼント渡すの頑張ってね!きっと、きっと喜んでくれるよ」
子供に励まされるとは思わなかったので、反応し忘れてしまった。
ばいばい、と手を振っておそらく母親か誰かの元へと帰る後ろ姿を見送る。
その子の黒い長い髪が揺れると、思わず見覚えのあるどこか懐かしい光景と重なった気がして目を擦ると、変わらない商店街の町並みがあるだけだ。
「俺も、そろそろ帰るか」
シノミヤは、彼には不似合いのピンク色のかわいらしいラッピング袋を持って、また商店街の道のりを戻るのだった。