ヘタレとドSとツンデレと
二月十四日。本部の扉の前に立て掛けられた看板に人々は哀れむ視線や、失笑をしては通りすぎていく。
「チョコレートを持っていない方は、本日入室不可」
堂々としすぎた媚方には通りかかった赤髪の少女も拳を握りしめてわなわなと震えている。
いや、ここで一つ訂正がある。彼女のバスト及び身長は少女のそれと大差は無いが、歴とした大人の女性であり、東部支所を任されるエリートコースの女王、春日井アリスなのだ。
アリスは扉を開けると早々に本部の所長室へと向かった。
「ちょっと羽柴!あんた何考えてんの!?あの看板、あんな物置いて恥さらしも良いところだわ!今すぐ撤去しなさいよ!」
「……、その前にアリス君。私に何か差し出すものがあるのでは無いでしょうか?」
殴り込んだ先、中世ヨーロッパの洋館の内装の様な部屋で寛ぎ優雅に紅茶を嗜む羽柴と呼ばれた銀髪の男は、アリスをじとりとした視線で見据えていた。