ヘタレとドSとツンデレと
少し熱っぽい感覚に頭が上手く働かない。思考回路が完全にイカれているのだろうか、動悸が激しくなり妙に息苦しい。シノミヤの視線の先に移る人物を見つめた瞬間に映像が切り替わった様に麗しく見えてくる。目の前の人物が欲しいと脳髄と身体が求めている。
「シノミん……?」
心配そうに首を傾げているその人物の手を徐に掴む。細くて小さな手の中にある箱を奪い取った。
「これは俺の物なんだろうが。さっさと寄越せ」
「食べてくれるの?あ、ボクがもう一つ食べさせてあげようか?」
「それより、俺がお前に食わせてやるよ。……リュカ」
目の前の人物の名前を呼ぶと共に引き寄せる様に顔を近づけていく。リュカに触れたいという欲望のままにその唇に……。
触れる寸前にさっきまでの熱っぽい感覚が正常に戻ってきた。あんなに愛しく見えた目の前の人物だったはずが、靄がかっていた視界が晴れ、目の前に現れたのは、常にシノミヤ自身を巻き込む鬱陶しいトラブルメイカーだった。