ヘタレとドSとツンデレと



「シノミヤ、リュカ君、ごめん!」


 その好奇心に打ち勝つことが出来ずにナツキはシノミヤから、チョコレート入りの箱を奪っていた。



「あっ、なっつん、返してよ!」
「ナツ、テメエまさか……そのチョコ、ノアに!」


 さすがは勘の良いシノミヤである。図星を突かれてしまい、ナツキはチョコを持ったまま走り出していた。
後ろからは惚れチョコ奪還すべく物凄い勢いでナツキの背中を追う二人組。



「テメエ……そのチョコ返せ!」


「そうだよ!試作品だろうと、ノンたんに食べさせようなんて許せない!だ、第一ボクがノンたんにあげるんだから!その為に試作品をシノミんに……」



「俺を実験台にしてんじゃねえ!とにかく、ドヘタレ。そのチョコこっちに渡せ!」


「あんな少しの時間なら俺にだって夢を追う権利はある!悪いけど、これは渡せないよ!」


 怒号を浴びながらもナツキはノアを探して駆け回った。その騒ぎにさすがに耐えかねたのか、所長室からアリス達が物凄い剣幕で出てきたのだ。


「煩いのよ、あんた達は!少しは静かに……え」

「うわっ、春日井さん危ない!」

チョコの箱を持ったまま、いきなり所長室から出てきたアリスとぶつかってしまったのだ。二人とも尻餅をつき、宙に舞ってバラバラになったチョコの一粒がナツキの口の中へと吸い込まれていった。



「っ、い、たいわね……。何なのよ、もう……」

眉間に皺を寄せながらも腰を擦りつつ、アリスは目の前のナツキに文句を言ってやらなければ気がすまないとばかりに顔を上げた。しかし、何時ものナツキとはどこか雰囲気の違う様子にアリス自身も一瞬固まってしまう。

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