ヘタレとドSとツンデレと
「春日井さん、怪我はありませんか?」
優しく手をとられアリスも一体何が起きているのか、混乱しているらしい。我に返ると顔が真っ赤に染まりながら、ナツキ手を払いのける。
「べ、別に平気よ!」
「良かった。俺のせいで春日井さん……いえ、俺の可愛いアリスに怪我でもされたら大変ですから」
微笑みながら再び彼女の手を両手で包むように触れるナツキに、アリスは開いた口が塞がらない状態になっている。
「あ。なっつんも食べちゃったんだ……」
「待て、あれ誰だ?何キャラだ?あのアホの原型留めてねえだろうが。つか、あれ、さっきまで……俺もあれだったのか……」
他人の事ながら、今更冷静になったシノミヤも今のナツキの現状を見ては、過去を抹消したい気持ちになった。
「うーん、シノミんは、もうちょっとこう……強引な感じだったかな」
真横でうっとりしているリュカに対し、ドス黒い感情がシノミヤに沸き上がってきては、その彼もとい彼女の両頬を思いきり引っ張る。
「いひゃい、いひゃいよう……ひのみん」
涙目になりながらつねられた頬を擦るリュカの事は放っておくとして、床に散らばったチョコレートを見下ろすと安堵する。さすがにナツキもリュカも、この無惨に散らかったチョコをノアに食べさせることはしないだろう。