ヘタレとドSとツンデレと

「何かあったんですか?」




「ありました。あの日、珍しくアリス君が私に眩しい程の笑顔で買い物に付き合って欲しいと言ってきたのです」




「デートですね」



「……」




何時もの仕返しにからかってみようと思ったが、瞳孔の開いた碧眼がナツキを見据えて来たので、思わず謝罪を口に先へと話を促す。




やはり、所長だけはからかうべきではない。





「アリス君が私に笑顔を向けるだけでも、最早地球の滅亡と等しい事件なので、私も丁重にお断りしました。絶対にその先に何かただならぬ物を要求されそうでしたし……」





「そもそも、笑顔で地球滅亡なんて例えが出てきませんけどね、普通。どんだけ嫌われてんですか」





「まあ、それだけ嫌われているのであれば、寧ろ丁重にお断りすれば引き下がってくれると思っていたのです。が、私の読みが甘かったのでしょう。真心も無いからこそ、見返りへの執着が強いのでしょうね。人間(ノーマル)の私に躊躇いなくヴェルベットアイを発動し、強制連行されました」





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