ヘタレとドSとツンデレと
だが、問題はその二件の先にある話題である。ナツキの最も気にしている核心でもあった。
「去年は俺は知らないけどさ……二人は、勿論その……ノアからも貰ったんだよね?お返しはどうしたの?」
「ノアか……」
「あれも、今思えば失敗でしたね……」
チョコを貰ったであろう二人に無意味な嫉妬心を覚えながらも問いかければ、二人の表情はナツキと焦点が合わず遠い世界の住人に成り果てようとしている。
「確かにあいつからもチョコを貰ってた。返しも今まで市販の物渡せば、何だってアホみたいに喜んでたんだが、あの日は、失敗としか言いようがねえ」
「どういう事?ノアの場合は、恐喝とか拘束とか、全くしそうに無いし一番の安全圏じゃないの?」
「我々もそう思って油断したのです。いつもなら市販のお菓子一つですが、色々酷い目に合いすぎたからか、彼女の今までの小さな満足度に罪悪感を覚えてしまって……」
「今年ぐらいは、あいつの好きなだけ何でも食わせてやろうと思った。けど、あいつは別に市販の物一つで今まで満足してた訳じゃねえ。ノアは今まで、プレゼントに喜んでいただけで、その量には毛ほども満足感なんて持ってなかったんだろ」
「好きなだけ食べていいなんて、ノア君に提案したのが間違いでした。後はもうブラックホールに延々食べ物を捨ててる気分を半日味わいました……」
「終わりがねえって恐怖だな……マジであいつの胃袋どうなってんだよ」
「……」