ヘタレとドSとツンデレと
「羽柴、居るんでしょ?それとも三人揃ってんの?あの看板はどういう事?まさか、先月の事を忘れた訳じゃないわよね?あんた達……」
しっかりした口調だが、可愛らしい声が扉の向こうから聞こえてくる。
アニメ声の彼女の言葉が何故こんなに恐怖を煽る音に聞こえるのか。
「シノミーん。居るのー?居るよね?ボク、シノミんとのデートプランを考えて来たから大丈夫!一緒に二人でスポーツしよう。屋内スポーツだけど、きっと身も心も温まるから……な、なーんてっ」
腹を空かした肉食獣達の唸り声にしかもう聞こえない。
丸腰で本気で大丈夫なのか?ここは羽柴を信じるしかない。
だが、それよりも早く無慈悲な女性の機械音が聞こえてきた。
最強武器を彼女が装備したという証だろう。
「白樺(しらかば)、標的ヲ確認シマシタ。コレヨリ、障害物排除モードニ移行シマス」
「え、ちょっ、ノア!?じょ、冗談だよね!?待って、待って!」
「おい、ノア待て!早まるな、別に俺らはお前を避けてた訳じゃなく……色々、色々あってだな!」
「……ぶうー……っ!」
何とも間の抜けた不貞腐れた声が返ってきたものの、次の瞬間外側にかけていた第一関門の太い鎖が残骸となり床に転がる鈍い音が聞こえた。
「……大丈夫です、こんな事もあろうかと、最後の切り札を用意しています」
「は、羽柴さんっ!」
何とも頼もしい声と張り付いた微笑みが返ってくる。そうだ、この人が何の策もなく籠城をするはずがない。きっと何か……とっておきの何か。