ヘタレとドSとツンデレと
「後はクリームを塗って……それから」
甘い香りに釣られたのか、キッチンの扉が開く音が聞こえてナツキは思わず振り返る。
「ノア?」
「あうっ!」
言葉にはならない声を発しながらも、スポンジと細かく刻んだ様々なフルーツに瞳を輝かせる。
本日一番の主役に、まさか見つかるなんて思っていなかったけれど、目の前の彼女は言葉では表せない程に、子供みたいに落ち着きなく喜んでいる。
「バレちゃったね。じゃあ、ノア……一緒に飾り付けやらない?俺、ケーキなんて作ったこと無かったから、手伝ってくれると嬉しいな」
バレてしまったのなら、二人で楽しめば良い。だって、今日はノアにとっては特別な日だから。