オリオン座をみつけたら
「…ありがとう、ございます。」
「うん。」
私は素直にハンカチを受け取って涙を拭った。
「話くらいなら聞くよ。」
優しい声で、柔らかく笑った。
「…私、今夢中になれるものがないんです。」
私は、正直に話した。
「今まで陸上を頑張ってきたんですけど、怪我しちゃったし、続けられないんです。」
今まで金メダルが欲しくて、部活以外にも陸上関係ならば全てこなしてきた。本だって陸上のついてのものを読んだし、練習に支障が出ないように規則正しい生活を送った。
そのおかげで推薦で合格出来た。
それなのに。それなのに。
「怪我をして、今までやってきたことを水の泡にしてしまった。入学だって、高校の先生が気を利かせてくれて…」
最後の方は涙で聞き取れるかわからないほどの小さい声になってしまった。
「そっか。それは、辛かったね。」
私の話を聞いても彼は同情なんかしなかった。
ただ、冷静に話を聞いてくれるだけだった。