その音が消える前に、君へ。
すれ違う生徒達はなんだなんだと私を不審そうに見つめてくるけれど、そんなのどうでもいい。
聞こえてくる皆の声や音なんかもう、私の耳には届いてくることはない。
体の循環が一気に動き脈が早くなり、呼吸が荒くなる。
一秒でも早く、情報を得て彼の元へと行かなければならない。
二階の特別棟の化学準備室の文字が見え、一気に加速する。
扉を目の前にし、乱暴に扉を開けた。
「信っ……!!!!」
ガランとした化学準備室で、パソコンと睨めっこしていた信が肩を震わせ私を見た。
慌てて立ち上がり駆け寄ってくる、その前に私も信との距離を縮めた。
「どっどうした、そんなに慌てて」
「教えて、信は知ってるんでしょ。榊くんの、事……!!」
切れる息を整えながらそう吐き出すと、出した名前に信の表情が少し動く。
やっぱり、この人は知っていたんだ。
最初からずっとこうなるって事を。
でも信を責める気はない、だって私がこうなるって思いもしなかったんだから。