その音が消える前に、君へ。


だが、今はのんびり電話している暇はない。

榊くんが今どこにいて、何をしているのか聞かなければいけない。


「すみません。榊くんを……榊 絢斗くんを知っていますか」

『ーーあの子のレイアントが私よ』


少しの間を置いて告げられたその事実に、私は一気に食いついた。


「単刀直入にお聞きします。榊くんは今どこにいますか。彼に会いたいんです」

『絢は……えっと』

「お願いします。教えてください」


真剣にそう言うと、分かったと腹を割って話すように全てを話してくれた。


『今さっき車で駅まで送ってきた所。今日の17時の新幹線に乗って……この街を去るつもりよ』

「その駅はどこですか」

『あなたの学校の最寄り。でもあの子はその後人のいない無人駅へと足を運ぶはずよ』

「無人駅……」


新幹線に乗るというのに、無人駅へ足を運ぶなんてやっぱり榊くんは変人だ。

時計を見れば16時5分前で、17時まであまり時間がない。

榊くんを追いかけるために急ぐ伝え、レイアントの女性にお礼を述べつつ電話を切った。



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