その音が消える前に、君へ。


裏切りを犯す、それがどんな事だか興味があった。

それも犯した一つの要因だったのかもしれない。

でも一番は、後悔したくなかったんだ。

悲しそうに泣きながら、自分の力を恨む少女に俺たちは皆支え合いながら生きている。

だから、皆と一緒に生きようと。



「でも確かに後悔はして欲しくないわね」


「ああ。でもまあ大丈夫さ。俺たちの教え子だ」


「ええ、そうね」



ふふっと笑った君があまりにも俺の胸を締め付けるものだから、我慢できなくなって体を動かした。

そっと彼女の頬に触れて見つめあって、そっとキスを落とす。

裏切りを犯したからって不幸せになるわけでもなく、俺は幸せを掴んだ。

だから紗雪、お前もしっかりと幸せを掴めよ。

俺はいつでもお前の味方だ。


だから、前へ進め。


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