その音が消える前に、君へ。
透き通って濁る



関わらない、そうは思ってはいても人と人との関わりは単純で、複雑だ。


関わる気なんてこれっぽっちもないというのに、どうしてこうなった。


「……」



無言のまま私はその場で動きを止めた。


うるさい音が響いているのは私の力のせいではなく、やけにうるさい図書室にいるせいだ。


テスト期間も終わったというのに、何故か今日は人が集まりざわめいている。


そんな中で私の興味を持たせる存在、榊くんと借りようとしていた本へと手を伸ばしたタイミングが被り、どう対処していいのか分からずに固まることしかできなかった。


少女漫画でよくあるシーンとはいえ、ドキドキするというよりも気まづさしかない。


伸ばしていた手を元に戻し、とりあえず会釈して回れ右をするが、あの……とか細い声が私の耳に入り込むがそのまま聞こえないフリをして足を動かした。


しかし、私の足音をかき消すようにもう一つの足音が横を通り過ぎていく。


先回りされて私が読みたかった本を無言で突き出す榊くんに、少し目を見開いて驚くもののそれ以上は反応しない。


誰だって予期せぬ出来事に対して、すぐアクションなど起こせるわけもない。


と言うよりかは、アクションを起こしたくなかった。


人の印象というものはすぐに植え付けられるし、何よりもこの人とは関わりたくない。


差し出されたままその場に突っ立っていると、榊くんは微かに眉をしかめた。



「「……」」



二人とも無言を貫き通すしかなく、気まづい空気が微かに流れ始めた。






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