その音が消える前に、君へ。
「その音が消える前に、君へ」


春の陽気な空気と暖かい日差しが、天窓から入り込んでくる。

いくつかの足音と、誰かがページを捲るその音にそっと耳を澄ます。

カウンターに置かれたの音で、仕事を再開しなければという意識に変わる。

カードを受け取りつつ、カウンターに置かれた本へと手を伸ばして触れる。

本独特の香りが肺を満たし、表紙を捲れば文字が規則的に並べられた様々な世界が広がる。

裏表紙のバーコードをスキャンすると、パソコンに期限が表示される。



「貸出期間は今月の28日までです」



そういって本とカードを手渡すと、ありがとうと返事が返ってきた。


一つお辞儀をして、その姿が見えなくなった所で今度は返却の手続きを開始する。

ゆったりと流れる時間でも、少し慌ただしい私の時間。

でも嫌いじゃない、だから私は今日もここで仕事に力を入れる。





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