その音が消える前に、君へ。
6年前ーー高校2年生の秋に私は裏切りを犯した。
後悔をしないために、躊躇いなく裏切りを犯した。
退学処分を受けるその覚悟はあったのに、何故かただの反省文10枚を書かされて終わりという呆気のなさに驚きを隠せなかった。
卒業してから信の仕業であったことを知った時には、呆れと感謝でいっぱいだった。
クラスメイトからハブられるようなこともなく、と言うより寧ろ何もクラスメイト達は分かっていなかった。
三年生になってからは受験勉強を必死にして、高校を卒業してからは家から近い国公立大学に入学。
成績はまずまずで、大学も卒業することができた。
音が聞こえることは周りの人は知らない中、友達と呼べる存在も私なりに頑張って作った。
あの頃の私と比べればほんの少しずつ、自分が変わっていっている。
そして大学を卒業してからは、この街ある少し大きな図書館で司書という仕事をしながら生活している。