その音が消える前に、君へ。
なりたかったからとかそういう訳でもない、ただ好きな本に囲まれて仕事をしたいと思った。
ーーそれと、高校の時に初めてあの人と会話したのも図書室だった。
あの思い出を鮮明に覚えていたくて、この道を選んだ。
もしかしたら、あの変人とまた同じことをするのではないかと夢を見ているということも事実だ。
まだまだ幼心が消えないなあと小さく笑いながらも、今日も仕事をする。
こんな天気がいい日はあの人だったら、空を見上げるんだろうか。
そんな事を考えて、返却ポストに入れられていた本を取り出し手続きを終わらせ元あった棚へと戻す作業へと取り掛かる。
大好きな本の肌触りが、手のひらを包み込む。
綺麗に並べられた本棚を見ると、清々しい気持ちになっていく。