その音が消える前に、君へ。
どうやら陽菜乃はもう仲を築き上げたようで、二人とも親しい間柄になっていた。
それを横目で見ながら、さざめく波の音に耳を傾けた。
大きくこだましていきながらも、音を消していくその哀しい音に何か似た音を聞いたことがあるような気がして、もう三人の会話は耳には届いてこない。
存在はここにあるというのに、人々はこの音には気づくことはまずないんだろう。
私だけが知るこの音に、そっと目を閉じた。
静かにその音に集中し、目を開ければ何も変わらずそこに大きな海はその身体を波打たせていた。
「紗雪~夕方まで自由時間だし、皆でどこか行かない?」
陽菜乃の呼ぶ声に引き寄せられるように、体の向きを変えテラスに背を向けるようにして足を動かした。
部屋の中で待つ三人の視線が私に集まっている気がして、首を傾げた。
「……どうかした?」
そう口にすると三人は我に返ったようにして、顔を見合わせていた。
そして弾けた笑いが部屋に響いていく。