その音が消える前に、君へ。
テラスへと続く窓を閉めて三人に向き直ると、陽菜乃が私の手を取った。
訳の分からないこの状況で、私はされるがままだ。
「菅野さんって海が似合うね」
ツインテールを揺らして私の顔を覗き込んでくるメンバーの一人に、私は動じずに目をゆっくり瞬かせた。
その隣でもう一人のメンバーが強く頷いた。
「紗雪、もう少しリアクションして」
陽菜乃が笑いながら私の手を離したかと思えば、そっと背を押した。
陽菜乃に対しても首を傾げると、今度は強く背を押しながらメンバーの二人の前へと突き出される。
「どうせなら楽しくやろうよ。二人の名前覚えてないんでしょ」
そう後ろからそっと囁かれて、振り向けば満面の笑みを浮かべた陽菜乃がいた。
こういう時の陽菜乃は、私の言葉には耳を傾けてはくれないのを知っている。