その音が消える前に、君へ。
疑われているこの空気をどうやって切り抜けようと考えていると、陽菜乃が肩を叩いてきた。
「その反応は本当に何もなかったのね」
「何か進展あれば出来る事探してあげてたのに~」
「もしや奥手?」
「ちょ、ちょっと待って。本当に何の話をしているのか教えて」
三人の話を止めるように、慌てて話を遮る。
キョトンとした三人はまたしてもその身を乗り出してくる。
「何って!榊 絢斗!彼との淡い恋!私達はその応援隊なんだよ!」
「……恋?」
「夏休み入る前から、少しずつ興味惹かれてたでしょ」
「あ、あれはだから、小説の主人公に似てて」
「ここに来てからも、自分では意識してないかもだけど目で追ってること多いんだよね~さゆちゃん!」
「えっと……?」
にやにやした視線が妙に背中をむず痒くさせる。
それどころか居心地が悪い。
「「「無自覚!」」」
三人が声を綺麗に重ねて、そのまま私に抱きついてくる。