その音が消える前に、君へ。
楽しそうに笑う三人に、歯向かうことをやめた私はされるがままだ。
脇腹を突かれ擽ったさが勝って、思わず笑ってしまう。
「さゆが笑った!可愛い!」
「人を何だと思ってるの……よッ!」
声が裏返りまたしても陽菜乃に脇腹を擽られ、三人に集中攻撃を受けるハメになり目尻に涙が溜まる。
「あはは!参ったか!」
「私何もしてないのに理不尽よ!」
「素直にならないさゆが悪いんだよん」
「うんうん!」
一体この子達は何を間違って捉えているのだろうか。
私が榊くんに??恋??
ありえない、そんなのありえるはずがない。
だって、私が彼のことに対して興味を持ってしまったのは紛れもなく力のせいだ。
あの音が聞こえていなかったら、ただのクラスメイトでしかなかったのだから。
恋というものをしたことがない私には、恋愛というものは無縁でしかない。
この力がある限り私は大切な存在を作りたくないのだから。