その音が消える前に、君へ。
望遠鏡の持ち主である清水先生も最終日としてやってきては、今日の賑やかさは一段と五月蠅い。
でも、その五月蠅さは嫌いじゃない。
目を閉じれば皆の笑い声と、静かに軋めきあう私だけが聞く事の出来る音が聞こえてくる。
その中に、やっぱり聞こえてきてしまう彼の音に、目を開いた。
笑顔で皆と戯れるその姿に、夕方の榊くんは幻だったのではないかと思う程にいつもの榊くんがそこにいる。
もやもやするこの感情に節目をつけるには、やっぱりハッキリと告げなくちゃいけないんだ。
ごめんなさい、言いすぎた、って。
隙を見つけてそう言おうと決めたのに、タイミングが分からないでいた。
「菅原さん、あの……」
構えている私に恐る恐るというように、榊くんから声をかけてきた。
気づけば観測する場所を変えるらしく、気合いの入った先生を先頭に班の皆は私を置いて移動していた。
陽菜乃の企みかどうなのかも分からないこの状況で、私は素直になることを決心した。
「その、この前といい、さっきといいなんか色々とごめん」
ごめんというその一言に、先を越されたと思いつつ私も慌てて頭を下げた。
「私こそ……ごめん」
精一杯の言葉は、それだけしか出て来なかった。