その音が消える前に、君へ。



画面に表示されたのは陽菜乃の名前で、内容を確かめるべくスマホのロックを解除した。


久しぶりー!から始まるそのメッセージに、そのメッセージを目で追った。



『今夜空いてたりする?よかったら、一緒に夏祭り行かない?』




そのメッセージに壁に掛けられたカレンダーへと視線を動かした。


夏祭り……そういやこの時期だったっけ。


ここらでは有名なお祭りで、多くの観光客で賑わう大きな夏祭りの見物は何と言っても打ち上げ花火だろう。


河川敷に集いその色鮮やかに輝きながら儚く消えていく夏の風物詩に、誰もが感嘆の声を上げる。


幼い頃は家族揃って見に行ったけれど、久しく行っていない。


どうしようかと悩んでいると、玄関からお母さんのただいまーという声が響いてきた。



「暑いわね~!干からびちゃいそう」


「おかえり。早かったね」


「お祭りがあるから道が渋滞するだろうからって早く会社閉めてきたの」



重たそうな荷物を机の上に乗せて、一息つくお母さんを見つつ陽菜乃への返答を考えていた。


どうせ家にいてもダラダラしちゃうだけだし、高校最後の夏休みを楽しんでみるかな。


陽菜乃に『行こう。18時にいつものとこで待ち合わせで』と返事を返して、時計を見た。


混む前に待ち合わせていた方が動きやすいし、さっさと支度終わらせちゃおう。





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