その音が消える前に、君へ。


急ぎ足で陽菜乃の元へと向かうと、陽菜乃の他にも見た事のある姿が2つあった。


「さゆ!久しぶり!」

「わあ~浴衣可愛い~」


そこに居たのは、臨海学校で一緒の班になった高木さんと、村上さんの姿だった。

三人共浴衣姿で、いつもと雰囲気が違う。

驚きながら陽菜乃を見ると、嬉しそうに一つウインクをしてきた。


「気合い十分ね。紗雪」


「えっと……あ、あの?」


「折角仲良くなれたんだから、高校生活の思い出みんなと作りたいな~って」


陽菜乃が高木さんと村上さんを順に見て、二人に笑いかける。

その二人が一緒に歩み寄ってきて、私の手を取った。


「今夜は女子会よ!」


「楽しもうね、さゆちゃん」


またしても陽菜乃に仕組まれたといつもの私だったら思うだろうけど、なぜか今日はいつもの私と違う。

素直に二人が私と自然に絡んでくれることが嬉しくて、取られた手をそっと握り返した。


「さあ!全員揃った事だし、少し食べ物買ったりして花火見よう!」


陽菜乃の声かけに、私以外の二人はお~!を掛け声を上げて歩き出す。

慌てて遅れた私も小さく返事をして、三人の歩幅に合わせて賑やかな祭り会場へと足を運んだ。



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