その音が消える前に、君へ。
屋台に並ぶたこ焼きと、ラムネを各自買って花火が良く見えるスポットの河川敷へと急ぐ。
案の定地元民に、県外からの観光客で埋め尽くされたその場所で四人が並んで座れる場所を探すのは難しそうだ。
「むぐぐ~こんなに混むなんて思ってなかった」
「まあまあ、ここは毎年常連の陽菜乃様にお任せあれ!」
そう言って手招きする陽菜乃の後を追い着いた場所は河川敷から少し離れた雑木林だった。
こんな場所から果たして花火が見れるのかと思っていると、現れたのは神社の鳥居と長く続いている階段だった。
「ここの階段の途中から人に邪魔されることもなく、花火が見れるんだよ。あ、足元気をつけてね」
慣れた足取りで階段を上っていく陽菜乃は、どことなく楽しそうだ。
そんな陽菜乃を追う私は靴ずれにならないように、慎重に上っていくと影を映しだす光の後から大きな音が響いてきた。
後を振り返れば大きな一輪の花がそこに咲き誇っていた。
「始まった!」
「綺麗~」
「紗雪~急げ~!」
はしゃぐ三人に追いつくように、階段を上るスピードを上げる。
三人が座っているその隣にゆっくりと腰を下ろすと、また一発打ち上がる。
そこから順々に大きな花火が打ち上がっていくのを、じっと眺めた。