その音が消える前に、君へ。
傍から見たら先生と生徒の禁断の恋とでも見えるであろう光景だが、私達にはそのような関係はない。
普通を目指して通うものの、この連携教育と呼ばれるシステムがある時点で普通とは少し違う。
生徒一人に対して、力を持った大人――『レイアント』と呼ばれる人間がマンツーマンで指導していき、その生徒の力の暴走や精神的不安定を回避させていく。
ここに入学した時から身内のように面倒を見てくれ、私からしたら彼は兄のような存在だ。
第一印象は爽やかお兄さんだったのに、今では爽やかの「さ」の字もない。
「まったく……お前も可愛くなくなったな」
「信には言われたくない」
「ああ!まこちゃんって昔は呼んでくれてたのに!」
「それ、いつの話よ……」
再びため息を漏らすと、信は楽しそうに一人笑う。
いつもいつもこの人は笑ってばかりで、本当に能天気な人だ。