その音が消える前に、君へ。


三人の他の追加注文を受ける事もなく、来た道を戻るようにしながら河川敷の道を歩く。

家族に友達、恋人など一緒に来ている人は違えども、皆の顔には笑顔が浮かんでいた。

人と関わる事を避けてきた私が、こうやって誰かと共に時間を共有しようと外に出て、おまけにおめかしなんかもして。

変わった、そうお母さんが言っていたのは間違いじゃないのかもしれない。

変わったのは、あの音を聞いてから。

――私の胸をかき乱すあの人に出会ってから。

ドォオン……と今までで一番大きな音と共に花を咲かす花火に、思わず足を止めた。

綺麗に咲くこの花も、いつかは消えてしまう。

でもその前に人々は声を揃えるかのように「綺麗だ」と、そう伝える。

伝えることに意味があるのなら、私はどうしたらいいのだろうか。


“君に、本当を伝えたい。”


それが、私に出来ることなのだろうか。

変わった私になら、もしかしたら出来ることなのかもしれない。

人と関わりたくない、そう思って生きてきたというのに。

人間ってこんなにも簡単に変わってしまうんだ。





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