その音が消える前に、君へ。


それ程までに、君のあの音が、姿が、仕草が……私の心を揺れ動かしては勢いをつけていく。

未知の経験ばかりに、色のない私の世界が多方向から色付けされていく。

この力を恨んでばかりいて、もう何もいらないと強く思っていた私の狭い狭い世界が広がっていく。

知らなかったこの気持ちの答え、それはまだはっきりと出て来ていないけれど、切なくもあり何故か嬉しくもあるそんな不思議な気持ちになる。

この気持ちが分かったら、私はどうしたらいいんだろう。


どうしたら――……


「菅原さん?」


「え……」


唐突に名前を呼ばれて前を見れば、少し驚いた顔をした……私の心を動かした榊くんがいた。

白のTシャツに、黒のスキニーといったラフな格好なのに、しっくりくるしお洒落に映る。

手ぶらでここまできたかというように、身につけているものは一切なかった。



「いつもと雰囲気違うから、声掛けるのになんか勇気振り絞っちゃった」


「えっと……」


「一人なの?」


「ううん。陽菜乃達と来てて……」


いつも通りの、普通の会話だというのに何故だか分からないけれど声が震える。

それどころか体温がじわりと上がっていくのが分かる。



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