その音が消える前に、君へ。
やっぱり変な人、君も私も。
心の中で小さく笑いながら残ったペットボトルを取り出して、いつもの私が戻ってくるのが分かる。
榊くんは蓋を開けさっそく飲み、花火を眺めていた。
「榊くんは、一人なの?」
疑問を呟くと、榊くんは頷きながら一つ息を着いた。
「毎年こうやって一人で、人の流れを見て、花火をちら見してって感じ」
「そう、なんだ」
「菅原さんは、毎年誰かと来てるの?」
「ううん。初めて誰かと一緒に来た」
「飲み物奢るのも、初めてだったんじゃない?」
「あ。確かにそうだ、榊くんにあげたのが初めてだ」
どうも私の中の初めてが次々蓋を開けて、飛び出していっている。
慣れないことばかりで、対応しきれない事もあるけどそれはそれでいいのかな。
新鮮な毎日といったら、オーバーになる気もするけどそれに近い。
「浴衣も初めて着た。お母さんがはりきっちゃって」
「そうなんだ。その浴衣すごく似合ってるよ」
急な褒め言葉に、頭を下げることしかできなかったけど榊くんはあまり気にしていないようだ。
少しドキドキする心臓をどうにかしようと、言葉を生み出すために口を開く。
「あ、あの――」
「俺さ、本当はある人とここに来たかったんだ」
私の言葉に重ねるようにして言った、榊くんの言葉に私は口を閉じた。