その音が消える前に、君へ。


「でも、関係作りが俺下手でいつも空回りしちゃうっていうかで。上手くいったかと思えば、俺のせいで離れていってしまう」

「……」


黙って榊くんの声に耳を傾けると、大きな花火がまた打ち上がった。

揺れるその光を視界の隅で感じながらも、榊くんをじっと見つめた。


「でも、その人さ。なんていうか掴みどころないっていうのかな。学校に行ってから色々人と関わってきても、その人との距離は縮められない、本当に不思議な人なんだ」


臨海学校の時の告白現場で呟いた人物のことか、と理解し妙に胸が苦しくなる。

嫌だとこどもが我儘を言うかのように、心がこれ以上話を聞きたくないと訴えてくる。

でも、今の私は榊くんの本当を少しでもいいから聞いていたい。


ああ、そうか――これは、この気持ちはきっと。



「いつか、その人と来れるといいね」

「……うん」

「ねえ。榊くん」


これを逃したら、私は今の私に後悔することになる。

だから言わなくちゃ、言える範囲の自分の言葉を。


「夏休みが終わってから、私の話をどうか聞いてほしいの」


少しずつ君を知りたい、そしてきっと分かるはず。

この気持ちが『恋』であると言う事を。

だからそれまで待っていて。


「いいよ。待ってる」


その答えを返してもらったその時、君の音が少しだけ弾んだような気がした。




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