その音が消える前に、君へ。
放課後に早くならないかと急ぐ気持ちを抑えながら、しっかりと授業を受けノートへと記入していく。
急ぐ気持ちがいつもよりも字を乱していく。
集中しようとしても、考えるのは榊くんの事ばかりで自分にため息をつく。
どうやって行こう、行ったらなんて声を掛けよう、お土産はどうしよう……
そんな事をシュミレーションしながら計画を練っていく。
もう先生の声は、私の耳や心には聞こえていなかった。
榊くんのあの音が聞きたくてしょうがなかった。
授業終了のチャイムが鳴り響き、帰る支度をすぐ様取り掛かったその時。
「お前ら少し席に着け」
そう言って今まで授業をしていた先生と入れ違いで入ってきたのは、クラス担任の岡崎先生だった。
ブーイングの嵐が巻き起こる中、私も早く早くと心の中で訴えた。
席を立っていたクラスメイトは、渋々と席へと腰を下ろしていく。
教壇の上に立った先生は机の前で、クラス全体を見渡した。