【完】溺れるほどに愛してあげる
何とかして彼にも参加してもらいたい…
それに午後の授業で体育祭のあれこれを決めるらしい。
でも隣は未だ埋まらず。
…話をしに行こう。
そう決めて立ち上がるお昼休み。
だけどどこへ行ったらいいの?
「くそー俺達の特等席が…」
「あれには逆らえねぇよな」
そんな話をしているのは同じクラスの青木と山本。
いつもお昼は屋上で食べてるはずなのに、どうして今日は教室にいるの?
「何か、あったの?」
声をかけると2人はパンが喉に詰まりそうになるくらい驚く。
そりゃまあ今まで話とかしたことなかったけどさ…
そんな幽霊に会ったみたいな顔しないでよ。
「あいつだよ、金田。金田に屋上を占領されてさ」
…あいつ屋上にいるんだ。
きっと今から行けば会える。話ができる。
2人にお礼を言ってからその横を通り過ぎようとして、青木に止められる。
「なあ、今から行くのか?」
「え…えっと、そのつもり」
「それならさ!取り返してくれよ」
「そんなこと言われても…」
体育祭に参加して!なんてあいつが嫌がりそうなことを言いに行くのに、さらに屋上を返してあげて!なんて…
しかも屋上を返してってなんだよってなる。
彼らにも屋上を使う権利はあるから、仕方ないよ…
別に俺らなんか気にしないで屋上使えばいいだろってなる。あたしも思ってしまう。
…あんな怖い人オーラ満載の人達とっていうのはちょっと腰が引けるけどさ。
「た、多分それはどうにもならないと思う…」
「そうか…はぁ…俺達の特等席…」
「ごめんね…」
「いや、俺らこそ変なこと言って悪かったな」
山本はそう言ってくれるけど青木は隣で、やっと見つけた俺達の特等席が…と何度も呟いていた。
どんよりとした空気が漂っている。
…そんなにお気に入りだったんだね。
ごめんね、何もしてあげられなくて…
少しの罪悪感を覚えながらあたしは屋上へと急いだ。