【完】溺れるほどに愛してあげる
「優愛に出会えて良かった」
…あたしも今同じことを考えてたよ。
千景が隣にいてくれてこんなにも幸せ。
「好きだよ。好きなんだ…」
狭い密室の中で、千景の甘い言葉が響きわたる。
あたしもすごく好き。
…だけどさ。
「待って…心臓が、保たない…」
この甘い空気に慣れていないあたしはただただ恥ずかしくて…
「そんなに恥ずかしいの?可愛い…
ね、こっち向いて」
「や、やだ…っ」
絶対、今あたし恥ずかしい顔してる。
こんなの見せられない〜!
慌てて手で顔を隠したあたしには千景の表情は分からないけれど、嬉しそうな声だけは聞こえる。
「手、どかして?」
そっと、顔を隠すあたしの手に千景の手が触れる。
「俺、こんな気持ち初めてで…好きが溢れそうなんだ」
その手に誘われるように隠していた手を下ろす。
視線と視線がぶつかる。
どきん、どきん
耳に聞こえそうなほど全身に鼓動が響いている。
「あたしも…だよ?ずっとずっと千景のことが好き…」
この気持ちだけはどうしても変わらなくて。
何をしてても考えてしまう、千景のことを。
千景を見るたび、思うたびに改めて好きだって感じるの。
「優愛…そんなの言われたら理性保たない…」
千景が立ち上がってあたしの隣に座ると、ぐらりと観覧車が揺れる。
その振動でさらにぐっと距離が縮まる。
「優愛…」
千景の手が伸びてきて、あたしの首の横、耳の下にするりと添えられる。
その目はいつもより潤んでいて、あたしが映っているのが見えた。
きっと、ドキドキしてるの伝わる…気付かれる…
どんどん近付いてくる彼に相対して、あたしの体もどんどん緊張で強ばってくる。
どうしよう。どうしたらいい…?
ぎゅっと目をつぶると、瞬時にガタンと揺れて明るくなった。
「ご乗車ありがとうございました〜」
そこにはクルーさんの眩しい笑顔があった。