【完】溺れるほどに愛してあげる
「ただいま」
「おかえりなさい!」
気付くと目の前がビニールの袋だらけになってしまっていたけど気にしない。
お父さんが帰ってきた。
ご飯が食べられる!
「お腹ペコペコでどうにかなりそうだったよ〜」
「ごめんごめん」
「どこ行ってたの?」
さっきまでヘラヘラと笑っていたのに、急に凍り付いたかのように動きを止めたお父さん。
…あれ?あたし変な事言った…?
「優愛、あのね?」
「母さん、いいよ」
あたしを諭そうとしたお母さんを止めて、黙ってリビングテーブルの椅子に座る。
あたしもそのなんとも言えない空気に逆らえず椅子に座る。
「もう優愛ならわかるだろう」
「…そうね…」
あたしの理解できないところで話が進む。
一体…なんだっていうの?
「今日は…命日だったんだよ」
その言葉を聞くのは今日で2回目。
…そうそうない言葉だけに嫌な予感が頭をよぎって離れない。
「父さんが逮捕した…ある人の」
…嫌。その先は…聞きたくない。
だって、だって…
「動機も、アリバイも揃ってた。でも凶器だけは見つからなかった。見つけることができないまま留置所で…」
いつか聞いた千景の話と…相違ない。
「父さんは…冤罪だったと思ってる」
……なんて神様は意地悪なんだろう。