【完】溺れるほどに愛してあげる


「あの…」





放課後、クラスのみんながそそくさと帰ってしまって教室にはあたしだけ。


とっこも日誌を担任に提出するといって出ていってしまっていた。



そんな時に、陸くんが教室に現れる。


なんとバッドタイミング…


それに同じ2年生なんだから敬語を使うことも、そんなに縮こまらなくてもいいのになぁ…





「どうしたの?」

「あ、いや…今日いつもと様子が違ったので何かあったのかな…と」





誰にも言えるわけがない。


…ああ、またあたしは嘘を重ねるんだ。





「ううん!本当に寝不足なだけだから」

「そうですか?」





バツが悪くて俯きがちだった顔を上げると、





「…っ!」





あたしの顔を覗き込むような感じで、陸くんの顔がすぐ近くにあった。





「ぅわっっ!」





ビックリして飛び跳ねる陸くん。





「すっ、すいません!髪の毛にゴミがついてて…」





そう言って申し訳なさそうに髪を触ってくる。


親指と人差し指でつまんだかと思うと、それを目の前に持ってくる。





「あっ、ありがとう!」





こんなに近くで顔を見たのは千景以外初めてだったりして…



変なドキドキから、何のゴミがついていたのかは確認できなかった。





「じゃあ…それだけだったので…」





何故かちらりとドアの方を見てから、失礼しますと頭を下げて出ていってしまった。


本当にあたしの様子を聞きに来ただけ?


そんなに仲良くもないのにどうして?


あたしの頭の中にはそんな疑問しか残らなかった。

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