【完】溺れるほどに愛してあげる
「とっこ、先に帰るね!」
この後、委員会があるというとっこを残して帰る。
今日は最悪なことに歯医者の予約。
一番嫌いといっても過言じゃないくらい。
まぁ…定期検診だから何もなかったら痛いこともされないんだけど…
「うん!バイバーイ」
ひらひらと手を振って教室を出る。
「はい、いいですよ〜
ちゃんと歯磨きできてますね」
ツンとした歯医者独特の匂いが充満した白い部屋。
心の中でガッツポーズをする。
よし、これでしばらくは痛い治療をする必要もない!
ルンルン気分で家に帰る。
だってもう、頭の中で色々考えて腹もくくった。
──お父さんのことは黙っておく、って。
やっぱり千景といると楽しくてドキドキして…幸せなんだもん。
それがなくなってしまうなんて、嫌だ。
離れていってしまうなんて、嫌だ。
だから嘘をつく。
だから隠しごとをする。
ごめんね、千景…
それくらい大好きなんです…