【完】溺れるほどに愛してあげる
次の日、千景は学校を休んだようだった。
なんとも曖昧なのは誰も彼の様子を知らなかったから。
…かくいうあたしも。
何も聞いていない。
LINEYにメッセージも来ていない。
…でもそれは、連絡できない理由があったんだって思うことにした。
そうじゃないと、平静を保っていられなかったから。
前のあたしなら笑い飛ばせたかもしれない。
千景が、連絡を取りたくなくてそうしてるなんてありえない!
って。
帰りにお見舞い寄っていくか!
って思っていたかもしれない。
だけど、今のあたしは状況が違う。
千景に隠しごとをしている…その事実がこんなにもあたしを弱くする。
もしかしたらバレてしまったのかもしれない。
その不安が心の中を埋めつくして仕方がない。
どうしようって焦りが背中をゾクリとさせる冷や汗になって流れていく。
でも、そんなことばかり考えていたら自分をちゃんと保っていられないから、必死に言い聞かせる。
きっと今頃は熱にうなされながら夢の中にいるんだ。
きっともうすぐして目を覚ましたら1番にあたしのところへ連絡をくれるんだ。
『信じて』
と言ってくれた彼のことを信じたい。
でもあたしはいつも変に悩んで、勝手に自己解決して決めつけてしまう。
ねぇ、千景。
…信じていいんだよね?
今日何の連絡もなかったのには理由があるんだよね?
…こんな、都合のいいときだけ信じる、なんて言葉に頼ってしまう自分が情けない。
だけどね…千景と一緒にいたい、その気持ちだけは絶対に変わらないから…
帰ってからもあたしはずっとスマホを片手に持っていた。
もし、連絡が来たらすぐに返したいから。
なぜ自分からメッセージを送らないのか…それは多分、意図的に連絡をしなかったんじゃないかって考えるネガティブなあたしが顔を出したから。
やっぱり完璧には信じきれないんだと思う。
ヴヴヴッ
手の中で震えたスマホを瞬時に起動させる。
ただの公式アカウントからの広告だと知って、そのままベッドへ放り投げた。