【完】溺れるほどに愛してあげる
「ごめんね、本当にごめんね優愛…」
「ううん。あたしこそ軽率だったよね…でも、千景のこと誰よりも好きなの。だから…」
陸くんとは何もないし何の感情も抱いてないよって言おうとして、とっこが泣いてるのに気付いた。
「とっこ!?」
「ごめんね、本当にごめん…そうだよね。なのにこんな状況になっちゃって…全部私のせいだ、ごめんなさい…謝ってもどうにもならないって、でも謝るしかできなくて…本当にごめんなさい…」
机に頭を擦りつけるようにずっと下を向いている。
とっこが陸くんに言わなければ、あたしがとっこに言わなければ、こんな状況にならなかった…?
…ううん、そんなことない。
事実がある限り、バレてしまうのも時間の問題だった。
とっこのせいじゃない。
隠そうとしたあたしが悪い。
千景もきっとそう思ってる。
あたしがちゃんと話さなかったから…
千景のことを信じなかったから…
「…行ってくる」
超高速でお弁当を食べて席を立つ。
向かう先はもちろん…
いるかどうかなんてわからないけど。
いたら話す。
いなかったらまた今度来ればいい。
ただでさえ重いドアが、不安と焦りで余計重く感じる。
それを力いっぱい押す。
ぬるい風がぶわぁっとあたしの髪をなびかせた。