【完】溺れるほどに愛してあげる
「…優愛?」
家に帰るとすでにお父さんは帰ってきていて、泣きじゃくるあたしを見て心配そうに声をかけてくれた。
「何かあったのか?」
「お父さんがこの前言ってくれた…冤罪の…その人って金田さん、だよね?」
「…!知ってるのか!?」
あたしの言葉を聞いた途端にお父さんの顔が強ばる。
千景のことを一から話した。
真剣に聞いてくれた。
全部話し終わったところでお父さんはあたしに深々と頭を下げた。
「おっ、お父さん?!」
「すまなかった。優愛にまでこんな思いを…本当にすまない」
お父さんだって、起こしたくて冤罪というものを起こしてしまったんじゃない。
でもこの起こった事実は消えない。消せない。
ずっとこの十字架を背負って生きていくんだ、あたし達親子は。
もし、この相手が千景のお父さんでなかったとしてもその罪は軽くならない。
間違い、では済まされない。
それくらい重いもの。
あたしは一体どうやったら償うことができるんだろうか。
「…今更こんなことを言って罪滅ぼしになんてならないのはわかってるんだが…父さんは今、真犯人を追ってる」
「…え?」
千景のお父さんが起こしたと思われた事件。
でも、それが冤罪だったのであれば真犯人は他にいる。
未だ罪にも問われず呑気に生活を送っているであろう真犯人が。
当時に千景のお父さんではなく、その人を間違いなく逮捕していれば…今こんなに辛くなかっただろう。
「7年、7年もかかってしまったが…目星はついてるんだ。
あとは、証拠さえ見つかれば今すぐにでもしょっぴける」
証拠…証拠が出て、その人を逮捕できたら…
千景のお父さんの疑惑も完全に晴れて、彼を本当の意味で救える?
様々な事実とこれまでの経験は消えないけれど、でも未来はいい方向に向かう?
もし、そうであるのなら…あたしも力になりたい。
罪滅ぼしの一環でもあるけど、千景に心の底から笑ってほしくて。
最初見た悲しそうな瞳。
その悲しみから連れ出したい、と思ったのは本当だから。
「ねぇ、お父さん。
あたしにも何かできる?」
「優愛?!
…すまない。優愛には危険すぎる。
何かわかったら必ず言うから、それまで待っていてくれ」
あたしは一刻も早くこの状況を良くしたい。
待ってるしかできないならば、大人しく待っていよう。
早く証拠が見つかるようにと祈りながら。