【完】溺れるほどに愛してあげる
「今日もまだ…」
申し訳なさそうに呟く亮くん。
あれから1週間経っても千景が教室に現れることは愚か、学校にも来ていないようだった。
「LINEYも返ってこなくて…
何かヤバいことになってるとか…ないですよね!?」
「そ、それは…大丈夫だと思う」
だってあたしのせいだから。
みんなにも心配かけさせるようなことさせて…本当に申し訳ない。
「陸さんも来ないんすよ!全然!」
ぷんすかと怒る亮くんになんだかホッとしてしまう。
こんなの不謹慎…だけど。
変わってしまったものもあれば、こうして変わらないものもあるんだって実感させてくれる。
それがありがたいんだ、とても。
*
そんなほっこりした気持ちを奪い去ったのは、帰宅途中にかかってきた電話だった。
「お父さん?」
普段、お父さんから電話がかかってくることなんてない。
おつかいの途中にお母さんからかかってくることはあるけれど。
「もしもし?どうし…」
「優愛!カサイは知ってるか!」
カサイ…かさい…笠井?
笠井だったら陸くんの苗字だけど…
「笠井?」
「笠井 陸だ!」
「うん、知ってるけど…」
「今どこかわかるか!?」
陸くんの居場所なんてわからない…けど、みんなに聞いたらわかるかもしれない。
そうLINEYを開いたはいいものの、お父さんからの圧で焦ってしまって上手く指が動かない。
「ま、待って待って…」
とりあえず手当り次第全員に聞きまくる。
『陸くんがどこにいるか知らない?』
すぐに返ってくる返事には
『知らないです』
『わからないです、すいません』
あたしの期待する言葉はなかった。
それでも…
『さっき俺見ましたよ』
そんな返事があったんだ。