【完】溺れるほどに愛してあげる
「ちぃさん!
良かった、来てくれて」
不気味な倉庫の中とは相反してニコニコと眩しいくらいの笑顔を向けていた。
その笑みは…俺を見ていないようで、どこか背筋をゾクリとさせるものがあった。
…こんな裏のある笑顔は初めて見た…
「来てくれなかったらどうしようかと思いましたよ〜」
未だそのテンションを保つ。
そろそろ本当に警戒心が働くほど怪しく感じてきた。
普段の陸とはひと回りもふた回りも違う。
お前は誰だって言いたいくらい。
「優愛さんと会ってるんですか?
最近、関係悪いみたいですけど」
さも、嬉しそうに投げかけてくる陸。
「陸…」
「会えるわけないですよね〜
恋人以上に衝撃的な関係ができちゃったんだから」
俺の言葉など初めから聞く気もないように、自分のペースで話を持っていく。
もはや陸の独壇場。
「ほーんと、何で出会っちゃうかなぁ…」
はははと高らかに笑う声が倉庫中に響き渡る。
「こんな面白い展開になっちゃうんだもん」
……は?
面白い?何のこと?
「まさに天国から地獄、とはこのことですよね〜」
「陸お前…」
「優愛さんの秘密教えたときのちぃさんの顔…最高だったなぁ〜」
ここに来て、陸に会ってからずっと話についていけない。
一体何の話をしてるんだか、さっぱりわからない。
「陸!
何が言いたい?」
俺の言葉なんて聞こうともしない陸から大声を出すという古典的な方法を使ってマウントを取る。
俺にもちゃんと話をさせてほしい。